2012年1月13日金曜日

阿部雅世さんのワークショップ

2010年の11月、阿部雅世さんのデザインワークショップに参加してきました。東京・白金の自然教育園で、アルファベットと数字を探し出すというもの。その名も「デザイン体操」。これを体験しただけで、こんなに日常の見え方が変わってしまうとは驚きました。行きも帰りも同じ経路なのに、見える景色が変わってしまうのです。その後も2週間くらい効果が持続しました。というのも、都内でできる体操として、面白い光や影、動きを探して写真に撮り、それに名前をつけ、その現象の原因を考える、というトレーニングを教えていただいたのです。そういう視点で探していくと、まぁなんと見たことのない景色が広がっていたことか…。会社のトイレで発見した光を前に、iPhone片手に写真を撮る始末です(笑)。他にも、天気の影響を受けて景色が変わり、例えば雨の場合、細かい水滴、水たまりなどに写る光など、その時にしか発見できない光が姿を表しました。

森に探しに行ったものは、アルファベットと数字だけなのに、日頃頭をかかえていた問題の解もすっと見つかってしまうという不思議な一日でした。

グラフィックの仕事に関わっているからか、森にいるのに、文字に対する気づきが多かったのも面白かったです。線の太さや長さ、文字内のアキ、背景とのコントラスト、あらゆる条件を満たすことで、文字は認識されるということを再発見しました。しかも、時間が限られているので、ものすごいスピードで判断を繰り返すため、文字に向き合いざるをえなかったのかもしれません。

このワークショップが宝探しゲームのように感じたのは、初対面の人とあいさつもそこそこに、いきなりチームを組み、自分の所属に関する自己紹介は禁止され、ファーストネームのみの自己紹介で始まってしまうという影響も大きかったように思います。阿部さん曰く、日本人は所属を意識しすぎると。また、同じ職種で集まりたがるので、業種がかぶらないチーム構成にしています、とのことでした。

他にも、この体操を通して、森の生態系を知ることにもなるそう。定期的に森を観察することで、季節ごとの表情を知り、どんな場所に、どんな木が生えているかなどが分かるようになるそうです。
多くの情報で溢れた森の中から、何かを探し出すということは、闇雲に探しても意味がなく、この辺りで発見出来そうという「勘」を働かせることになるので、この「勘」が、現代のような情報社会を生き抜いていくのに、嫌な目に合わなくていいですよー、と軽やかにおっしゃっていたのが印象的でした。

* * *

ワークショップでの収穫が多すぎて、内容を考えているうちにバタバタと1年以上経ってしまったけれど、自分の忘備録として。いろいろな事があった2011年。2012年は、少しずつでも前へ進む年にしてみよう。