まったく興味がなかったけれど、たまたま聞くことになった、
岩井俊雄さん、田中宏和さん、
真鍋大度さん、
牧野武文さんのトークイベント「横井軍平展」in
VACANTが面白かった。
そもそも
任天堂は、ゲーム会社だと思っていたけれど、当初は、花札・トランプを作っていたらしい。展覧会名になっている
横井軍平さんという優秀な社員がいて、その方の影響を、岩井さんをはじめ、多くの人たちのモノづくりに、今も影響を与え続けていることを初めて知った。
もともと横井さんは、設備の保守点検が仕事で、暇つぶしに作ったマジックハンドが、たまたま社長の目にとまったところから、ゲームづくりをスタートさせたとのこと。マジックハンド以外にも、
光線電話 LT(※1)、
ラブテスター(※2)のような商品が、その当時おもちゃとして世に出ていたとは。
一番印象に残っているのは、岩井さんのプレゼンテーション。
会場の人たちに魅力を説明するには、なかなか難しいインタラクションゲームを、会場のプロジェクター以外に、ビデオカメラで手元を写したり、PCに切り替えたり、スーパーファミコンを準備したり、30分という短い時間を有効に伝えるための準備がされていて、岩井さんの作品に対する想いが伝わってきた。
内容的には、「
Tenori-on」という商品がいきなり誕生した訳ではなく、サウンドファンタジー(ゲームソフト)、展覧会用に手売りした
ゲーム機など、音と光を一緒に楽しむというアイデアをいくつか形にしながら、「Tenori-on」が生まれたことが分かった。岩井さんのゲームは、一般的なゴールに向かうゲームと違って、光と音を楽しみながら遊べる、操作側の創造に委ねている楽器ゲームのような印象を受けた。また、すべてのアイデアに、美意識のセンスを感じた。
ご本人曰く、横井さんとの共通点は、「光線電話 LT」と「
Sound-Lens」という作品が、どちらも光と音の波長を置き換えることで成り立つ作品で、知らないうちに同じアイデアを形にしていたという話だった。
任天堂の強みは、ゲームキャラクターを記号に置き換えたとしても面白さが伝わることを心がけていて、「モノ」と「体」の関係で成り立つ、面白さの本質をとらえていることだと言っていた。アナログからデジタルまで、面白さをそのままにおもちゃを作り続けた数少ない人らしい。と、すっかり面白さに魅せられて帰ってきたという、不思議な1日だった。
※1: 声を光に変え、受けた光を音に変換するトランシーバーのようなもの
※2: 2人の相性によって針が振れるというもの

岩井さんのプレゼンテーションの様子。

商品化されたマジックハンド。

展覧会の様子。